大串君じゃねえの、と本名に掠りもしないあだ名でのんびり呼ばわって、顔見知りの銀髪がひらりと手を振る。
 付き合う気の無い土方だが、足を止めて舌打ちした。
 それに銀時がにやりと笑う。
「こんなところで立ち話も何だし、近くの和菓子屋でも行かない? 勿論大串君のおごりで」
 近くの、と後ろ指で差すのはの店。
「ふざけんな! てめえの分はてめえで払いやがれ!! ……つうか、俺ぁ、行けねえ」
「──……へえ?」
 罰が悪そうに顔を背けた土方に、銀時は片眉を上げる。
 行かない、ではなく行けないのだと言う。
 むしろ折半なら行くつもりは多少なりともあるらしい土方だが、何やら事情が合って行きたくないのだろう。
「そういや最近が元気ねえんだけどさぁ、原因、知ってんだろ」
「な……っ!? 何を根拠に決めつけてんだ! 証拠でもあんのか、コラ」
 あからさまに動揺しておいて、逆切れとは恐れ入る。
 銀時は目を細め軽く土方を睨め付けた。
 普段なら必要以上に激昂するくせに、苛立つ己を抑えようとするかのように土方は煙草を咥えて銀時の視線から逃れようとする。
 その態度に吐息し、これ以上突っつくのも面倒だと、銀時は視線をずらして頭を掻いた。
「あいつは笑顔で本当の気持ち隠して壁作ってるだけだ。お妙より年季入っている分、鋼鉄になっちまってるけどな」
「…………は? 急に何言ってやがる。つか、誰のことだ」
だよ。何したかしんねえけど、あんたが悪いならとっとと謝罪しろ。あいつが悪いなら、本人にそう言え」
 聞かねえ奴じゃねえよ、と誰に聞かせるでもなく言葉を吐くと、それで満足したように銀時は踵を返して歩き出す。
「あ、おい!」
「んじゃあな、税金泥棒」
 呼び止めておいて言いたいことだけさっさと吐いて、去っていく。
 自分勝手な銀時の態度に土方は米神に青筋を浮き上がらせ、咥えていた煙草を思わず噛み潰す。
「何だってんだ……っ!」
 別に、土方が悪いわけでも勿論が悪いわけでもない。
 喧嘩したわけでもないのだから、けれど用も無いのに和菓子屋へ行く意味がない。
 謝罪したところで相手が困惑するだけだ。
 こっちにしても、謝罪する理由がない。
「……ちっ」
 吸う楽しみもなくなった煙草を吐き捨て、土方は爪先で火の点いたままの部分を揉み消した。
 舌打ちしてふいに顔を上げた先には、和菓子屋がある。
 無意識にでも此処へ足が向いた自分に腹が立つが、きっと店には沖田が居座っているはずだ。
 サボり魔を連れ戻すには丁度良い理由になる。
「…………」
 理由を作らなければ。
 理由を無理矢理作ってまで。
 意識しないようにして、結局意識している。
 そんな馬鹿らしい悪循環に、土方は深く息を吐き出した。