どうして今までブッキングしなかったのか。
それは本当に偶然としか言いようが無い。
面白げなを挟み、沖田と神楽は二人ともそっぽを向いて和菓子とお茶を胃に溜め込んでいた。
こんな状況、お互いに楽しめるはずが無いのだ。
嗚呼、青春
「、こんなヤツ帰せヨ」
「後からのこのこやってきたくせに、不作法な奴でさァ。今後出入り禁止にしておかねえと、店の評判に関わりやすぜ」
「んだとコラァ! サド男のくせにやんのカ! 大体私は店に寄ってちゃんとのこと待ってたネ。勝手に入り込んでるお前に言われたくねえヨ」
「俺ァいっぱしの大人だから、子供の挑発にゃ乗ってやんねえよ。俺が店から回っちまったら客驚かすだけでさァ。そこまでバカじゃねえや」
「怖いアルか? サド男の癖に私に負けるのが怖いアルネ!」
「けっ。言ってろィ。そっちこそ俺に負けるのが怖いんだろうが」
互いに反対方向を睨みつけながらの言い合い。
普段なら出会った瞬間に取っ組み合いが始まるのだが、今日はどちらもを挟んでの牽制のみ。
真選組や万事屋の連中ならば巻き込んでも構わない。
が、は巻き込んではいけない。
ちょっとした怪我でも瀕死の重傷になってしまいそうだ。
「二人とも、仲良しなんやねえ」
状況を把握していないようなのんびりとしたの言葉が、緊迫した空気をぶった切る。
「どこがヨ?! 私こんなヤツと仲良しじゃないネ!」
「悪い冗談止めて下せえ。変なもんでも拾い食いしたんじゃねえですか?」
ほぼ同時にを振り返り、言葉を発する。
「ほら、息もぴったり」
くすくす笑いながら二人を指差し、は全くペースを崩さない。
ごしに目が合い、沖田と神楽は揃って息を吐き出した。
無理な自制と居心地の悪さに、折角のお茶も和菓子も味がしない。
ただ先に帰るのは負けた気がして嫌なので、こうして腰を据えたまま相手を牽制している。
しかし元々我慢が嫌いな二人であり、どちらもじりじりとしたものを抱えていた。
が少しでも席を外せば、確実にぶつかり合う。
控えめな戸を叩く音がした。
「どちらさん?」
「邪魔するぜ」
の問いかけに戸を開けて入ってきたのは、土方だった。
縁側のと沖田の姿を見つけると、苛立たしそうに片頬を歪める。
「てめえ、何こんなところで油売ってやがる」
「油売りじゃねえんで売り子はしてやせんよ。土方さんもう耄碌しちまったんですかィ?」
「額面通りに受け取ってんじゃねえよ! 総悟、てめえここで何してやがるんだ?」
縁側でのんびりお茶をして、どう見ても休んでいるようにしかみえない。
確かに今は任務はないが、それでも見回りなどの仕事はある。
土手で昼寝をしているのと今の状況は、大差ない。
「店主がストーカー被害に遭ってるから、そのストーカー野郎を捕まえようと思いやして」
「嘘吐けっ!」
「いやー、本当でさァ土方さん。ゴリラみたいな男に付け回されて困ってるって」
「お前らトコのゴリラアルヨ。姉御以外にも手出してたアルナ」
「近藤さんは一途な人でさぁ。姐さん以外見えやせんぜ、あの人にゃ」
「ゴリラ男に似たゴリラ男なんて、もうゴリラそのものヨ。バナナで釣れば簡単ネ」
「すぐばれる嘘を広げてんじゃねえ!! お前も何とか言え。庇い立てしてっと、ただじゃすまねえぞ」
土方に水を向けられてはこくりと頷く。
「その通りなんよ。今少ぉし、困っとってねえ」
「おら、店主がそう言ってんだからお前らも……。──は?」
さらりと流れた肯定に、土方は目を丸くした。
沖田も神楽もを見る。
注目されておかしそうに笑いながら、は言葉を続けた。
「と言うても、幼馴染みたいな関係やから、知らん仲でもないんやけどね。せやけど、ねえ」
「こないだの騒ぎの元凶ですかい?」
神楽を気にしながら言葉を濁したことに、沖田が思い当たる節を思い出す。
「で、どうにかしたいのか? そいつ」
「思い込みの激しい人やから、誤解解かなあかんのやけど……。面倒やなあ、て」
土方が問えばはおっとりとした表情のまま答える。
「やっぱりストーカーヨ。に付きまとってるネ。こういうときは銀ちゃんに任せるアル。万事屋銀ちゃんがなんとかしてくれるネ!」
自信満々、神楽は胸を叩いた。
やっとに恩返しができる、そう思ったのか単に面白そうだと思ったのか、それは神楽だけが知っている。
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