目の前が赤く黒く、歪んで行く。
 痛いほどの静寂が精神を蝕んで行くのを、誰も気付かない。
 誰にも気付かれないまま、世界は崩壊していく行くのだ。

      ラ 。

 何も残らない世界にただ一人取り残され、泣きたくなるほどの青空の下に、何故か立っていた。
「どうする? ったって……だって辰馬は宇宙だし、小太郎はまだ頑張るだけでしょう? 晋助も……」
「マテマテ。何で俺の名前が出てこないの」
「そりゃ、目の前に居るんだもの」
 宇宙へ旅立つ坂本を見送り、銀時と一人の少女が残されていた。
 坂本との会話で銀時の行き先も容易に想像できる。
「そうね……京都に親戚も残ってるようだし、そっちに行ってみるわ」
 両親を失った彼女達を引き取ることもなく、連絡一つ寄越さない遠い遠い親戚。
 もしかしたら彼女達双子の存在を知らなかった可能性もあるが、確認はしていない。
 今回の訪問もただ他にやることも思いつかないから、暇潰し程度の意味合いでのこと。
 上手く行けば手土産を持って江戸へ帰って来ることもできるかもしれない。
「江戸へ来るなら、連絡する」
「おう」
 互いに連絡先を知らぬまま、二人は笑顔で別れを告げた。














































      


「…………」
 居を構えたとはいえ、消息不明者を含めて此方から積極的に連絡を取り合ったことはない。
 面倒だ、その一言に尽きる。
 なのに。
「銀ちゃん、何してるアル?」
 先ほどから一通の便箋を眺めているだけで、家主は一向に動く気配がない。
「んぁー……」
 何度目かの気のない返事を貰い、焦れて神楽は立ち上がった。
 背後に回り込んで便箋の中身を覗き込む。
「……何よコレ」
 白い便箋には真ん中にただ一言。

『元気ですか?』

 細い線で書かれた言葉は女性的で、けれど何故か笑いを含んでいるように見える。
「ラブレター」
「ドコがヨ。私でももう少し書けるネ」
 名すら明記しておらず、誰が送ったのか一見して判らない。
 だのにその文字だけで銀時は理解したというのだろうか。
「他に書くことなかったんだろ」
「それにしてもあっさりしすぎヨ」
 どうでも良いよと返しながら、銀時は便箋を眺めたまま動かない。
「どっかのストーカーよろしく、俺のこと調べたんじゃねえの?」
 だから他に書くことがないのだ、とまるで他人事のように呟く。
「ふーん」
 事情を聞かない神楽もそれをあっさり納得して、新八が来るまでの間二人してただ便箋を覗き込む。